顎関節症の予防・改善に大切なこと|TCH(歯列接触癖)の重要性
顎が痛い、口が開きにくい、カクカク音がする――。
このような症状で「顎関節症(がくかんせつしょう)」と診断されたことがある方は、決して少なくありません。
顎関節症の原因は一つではありませんが、顎を動かす筋肉の不調が深く関係しているケースが多くみられます。
その治療・予防の中で、近年とても重要視されているのが、行動変容療法(生活習慣や癖の見直し)です。
中でも特に大切なのが、TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)への対応です。
ここでは、「なぜTCHが顎関節症と関係するのか」「なぜTCHを意識することが改善につながるのか」を、できるだけわかりやすくお伝えします。
TCH(歯列接触癖)とは?
TCHとは、「食事や会話をしていないにもかかわらず、上下の歯が無意識に触れている癖」のことを指します。
本来、リラックスしているときには、上下の歯の間にはわずかなすき間があり、触れていない状態が正常です。
しかしTCHがあると、次のような場面で歯を接触させ続けてしまいます。
- パソコン作業をしているとき
- スマートフォンを見ているとき
- 家事や仕事に集中しているとき
「強く噛みしめているわけではないから大丈夫」と思われがちですが、弱い力でも、長時間続くことが大きな問題になります。
なぜTCHが顎関節症を悪化させるの?
歯が触れているということは、顎を動かす筋肉が休まず働き続けている状態です。
この状態が続くことで、
- 筋肉が疲労しやすくなる
- 血流が悪くなる
- 痛みや違和感を感じやすくなる
といった変化が起こります。
さらに筋肉の緊張が続くことで、顎の関節にも負担がかかり、痛みや違和感、口の開けにくさにつながっていきます。
つまりTCHは、顎関節症の「予防」「改善」「再発防止」に深く関わる重要な要因なのです。
行動変容療法とは?
行動変容療法とは、自分自身の生活習慣や無意識の癖に気づき、少しずつ行動を変えていく治療法です。
顎関節症における行動変容療法の中心となるのが、TCHへの対応です。
これは、無理に我慢する治療や、厳しいトレーニングではありません。
「気づく → 意識する → ゆるめる」
この流れを繰り返していくことが基本になります。
TCHへの具体的な対処法
① 上下の歯は離れていて正常だと知る
まず大切なのは、「何もしていないときは、歯は触れていなくてよい」という正しい知識を持つことです。
このことを知るだけでも、自分の癖に気づきやすくなります。
② 気づいたら、そっと力を抜く
歯が触れていることに気づいたら、次のことを意識してみましょう。
- 唇を軽く閉じる
- 舌を上あごにやさしく置く
- 肩や首の力も一緒に抜く
「できなかった」と自分を責める必要はありません。
気づけたこと自体が、改善への大切な一歩です。
③ 目に見える工夫を取り入れる
TCHは無意識の癖のため、思い出すきっかけを作ることがとても効果的です。
- パソコンに付箋を貼る
- スマートフォンの待ち受け画面にメモを書く
- 時計やモニターを見るたびに意識する
こうした小さな工夫が、行動変容を自然に助けてくれます。
マウスピースだけでは不十分な理由
顎関節症の治療では、マウスピース(スプリント)を使用することがあります。
これはとても有効な治療法ですが、TCHが改善されないままだと、十分な効果が得られにくい場合もあります。
なぜなら、起きている時間帯のTCHや、日中に続く筋肉の緊張は、マウスピースだけでは防ぐことができないからです。
そのため、行動変容療法と組み合わせて行うことが重要になります。
TCHの改善は「自分で治す力」を引き出す治療
TCHへの対応には、特別な道具や強い薬は必要ありません。
その代わりに、
- 自分の体の状態に意識を向けること
- 日常の中で少しずつ行動を変えていくこと
を大切にします。
これは、症状を一時的に抑える治療ではなく、再発しにくい状態を作るための治療です。
まとめ|顎関節症の治療(予防・改善)にTCHが重要な理由
- 顎関節症は生活習慣の影響を強く受ける
- TCHは顎や筋肉に長時間の負担をかける
- 行動変容療法は根本的な改善につながる
顎関節症の治療は、「歯や関節だけを見る治療」から、「日常生活全体を見直す治療」へと変化しています。
もし顎の不調がなかなか改善しない場合は、ぜひTCHという視点を取り入れてみてください。
小さな気づきが、大きな改善につながることがあります。
気になる症状があれば、当院へお気軽にご相談ください。




















